「配属ガチャ」と感じた若手が辞めないために ― 配属後の"孤立"をつくらない組織づくり

配属が決まった日から、定着の勝負は始まっている
内定者研修を終え、ようやく配属が決まる。ところが、その配属先が本人の思い描いていたものとは違っていた——。こうした状況は、新入社員の間で「配属ガチャ」と呼ばれ、若手の意欲や定着に影響し得るものとして、人事・採用の現場でも意識されるようになりました。
※「配属ガチャ」という言葉について
「配属ガチャ」とは、新卒入社時の勤務地や職種が必ずしも希望どおりになるとは限らないことを、「ガチャ」になぞらえた言葉です。ただし、これは配属された本人の受け止め方を表す言葉であり、企業側の実態を表したものではありません。企業の配属は、経営戦略・人事戦略に紐づいた人員計画に基づく合理的な判断であり、全体最適や本人の適性を踏まえて決められているケースも多く、本来「ガチャ」のような偶然の要素はありません(参考:カオナビ人事用語集)。本記事は、企業の配属判断に問題があるという立場ではなく、「配属の意図や期待が本人に十分に伝わらないまま、本人が『想定と違う』と感じてしまうこと」を課題として扱います。
つまり問題の本質は、配属の良し悪しそのものよりも、配属の意図が本人に見えにくいこと、そして配属後に本人が孤立しやすいことにあるのかもしれません。人事責任者にとっての問いは、「配属ガチャをどうなくすか」ではなく、「配属の意図を丁寧に伝えたうえで、それでも本人が想定と違うと感じたとき、若手が孤立せず、前向きに働き続けられる状態をどうつくるか」ではないでしょうか。
本記事では、Z世代の離職に関する調査データを確認したうえで、配属後に若手が直面しがちな壁と、それを組織として和らげるための視点を整理します。

若手の"転職予備軍"は、決して少なくない
まず、若手世代の意識を確認します。株式会社ペンマークが2025年6月に公表した「Z世代の就労意識調査2025」では、卒業後に最初に入社する企業を3年以内に辞める可能性を、学生に5段階で尋ねています。その結果、「可能性がある」側(5段階のうち3〜5)と答えた割合は**44.0%**で、内訳は「様子見」が30.7%、「可能性が高い」が13.3%でした(ペンマーク/PR TIMES)。同社はこの層を「転職予備軍」と呼んでいます。
なお、この調査は同社サービスを利用する学生(有効回答407件)を対象とした自社調査であり、全国の学生を代表するものではありません。また、測定しているのは実際の離職行動ではなく、あくまで本人の意向です。ただ、就職前の段階で4割を超える学生が「辞める可能性をゼロとは考えていない」という結果は、若手の定着を考えるうえで一つの参考になります。
そして、結果として離職する背景として、同社は本人にとって不本意な配属(いわゆる配属ガチャ)、成長実感の得られない環境、心理的安全性の欠如などを挙げています。これらは同社の見解であり、調査結果として割合が示されているわけではない点には留意が必要です。
厚生労働省の調査によれば、2022年3月卒の大卒者の3年以内離職率は**33.8%**でした(前年から1.1ポイント低下、nippon.com)。大卒者のおよそ3人に1人が、入社後3年以内に最初の職場を離れている計算です。企業規模による差については、前回の記事「「あの人にしかわからない」が経営リスクになる ― 見えない退職リスクの正体」でも整理しています。

離職の理由は、待遇だけではない
では、若手は何を理由に離職を考え、何を理由に働き続けているのでしょうか。リクルートマネジメントソリューションズが2023年に公表した「新人・若手の早期離職に関する実態調査」(入社1〜3年目の大学・大学院卒の正社員と、育成担当者・上司の計1,350名)からは、次のような姿が見えてきます(HRプロ)。
まず、過去3年以内に自己都合で退職した人の退職理由で最も多かったのは「労働環境・条件がよくない」(25.0%)で、次いで「給与水準に満足できない」(18.4%)でした。待遇や労働環境の整備が離職防止の大前提であることは、このデータからも明らかです。
一方で、退職経験はないものの離職を考えたことがある人の理由を見ると、最多は「仕事にやりがい・意義を感じない」(27.0%)でした。以下、「給与水準が満足できない」(19.0%)、「自分のやりたい仕事ができない」(12.8%)と続き、「職場の人間関係がよくない、合わない」(11.8%)や「今後のキャリアが描けない」(10.9%)も上位に入っています。
さらに、同調査では働き続けている理由として「職場の人間関係がよい、合っている」(13.3%)や「一緒に働きたいと思う人がいる」(10.4%)が挙がっています。また、入社1年目に感じる壁としては、「仕事に正解がなく、どうすればよいか分からない」(27.1%)が最も多い項目でした。
これらのデータから、待遇だけでなく、「やりがいを感じられるか」「キャリアを描けるか」「一緒に働きたい人がいるか」といった要素も、若手の定着に関わっていることがうかがえます。配属先そのものだけで決まるわけではなく、配属後にどのような関係性や成長の実感を持てるかが、定着を左右する余地があると考えられます。

配属後の若手が直面しがちな、3つの壁
こうしたデータを踏まえると、配属後の若手は、次のような壁に直面しやすいと考えられます。
- 「誰に聞けばいいか」が分からない
入社1年目の壁として「仕事に正解がなく、どうすればよいか分からない」が最多(27.1%)に挙がっているとおり、新人にとって「何を、誰に聞けば解決するのか」が分からない状態は大きな負担になります。社歴の浅いメンバーは、配属先の上司・先輩以外に、社内にどんな専門性を持つ人がいるのかを知る手がかりがほとんどありません。組織が大きくなるほど、そうした手がかりは得にくくなります。この点は、前々回の記事「「300人の壁」とは?」でも触れた通りです。 - 自分の成長や貢献が見えない
「仕事にやりがい・意義を感じない」「今後のキャリアが描けない」といった理由が離職を考えるきっかけになっているように、自分の成長や、周囲への貢献が見えない状態は、定着の妨げになりやすいと言えます。配属先の業務が想定と違っていた場合、なおさら「この会社で何が身につくのか」が見えにくくなります。 - 相談すること自体に、心理的なハードルがある
「こんなことを聞いたら評価が下がるのではないか」「忙しそうな先輩に迷惑ではないか」——若手がそう感じて質問をためらうと、小さな疑問が解消されないまま積み重なっていきます。ペンマークが背景として挙げた「心理的安全性の欠如」は、まさにこの状態を指していると言えるでしょう。

配属の意図を伝え、配属後の"想定とのギャップ"をつながりで埋める
まず前提として、配属の意図を本人に丁寧に伝えることが重要です。カオナビの用語集でも、希望の聞き取り、配属先の早期告知、「その部署でどのような能力の発揮を期待しているか」という配属理由の説明、内定者へのフォロー、配属後の1on1やメンター制度による相談体制などが対策として紹介されています。
こうした取り組みによって、本人の納得感を高めることができます。
そのうえで、配属の意図が十分に伝わっていても、本人が「想定と違う」と感じることはあり得ます。配属後にそのギャップを本人が抱え込まず、若手が孤立しにくい状態を組織として整えておくために、次の3つの視点が重要になります。
- 配属先の外にも、相談できる相手を持てるようにする。 配属先の上司・先輩だけに頼る状態から、部署を越えて「この分野なら、あの人に聞けばいい」と分かる状態へ。
- 自分のスキルや関心が、社内から見える状態にする。 本人の強みや興味が周囲に伝わっていれば、配属後に新しい役割やプロジェクトに声がかかる機会も生まれやすくなります。
- 日々の貢献を、周囲が認める機会をつくる。 「見てもらえている」という実感が、成長実感ややりがいを支えます。
ペンマークも、対策として、メンターによる支援、スキルの成長を実感できる仕事設計、社内副業、越境プロジェクトなどを挙げています。いずれも、配属先の枠を越えた経験や関係性をつくる考え方だと言えます。
Beatrustは、こうした考え方に基づいて設計されたプロダクトです。社員一人ひとりのスキルや関心を、日々の「Thanks(感謝)」のやり取りを通じて自然に蓄積・可視化するプロフィール機能により、新入社員も配属先以外の先輩の専門性や得意分野、価値観を知ることができます。また、部署を越えて質問できる「Ask」機能では、質問が適した知見を持つ人に届き、匿名で質問を投げかけることもできるため、「こんなことを聞いても大丈夫だろうか」という心理的なハードルを下げることができます。

まとめ:配属の意図を伝え、配属後の"つながり"をつくる
若手の定着は、待遇や労働環境といった土台の上に成り立つものです。そのうえで、配属後に「聞ける相手がいる」「成長や貢献が見える」「安心して相談できる」と感じられるかどうかが、若手が組織に根を下ろせるかどうかの分かれ目になり得ます。
配属の意図を丁寧に伝えたうえで、それでも生じ得る「想定とのギャップ」を配属後のつながりで補う——この両輪が、若手の定着を支えます。若手の定着に課題を感じていらっしゃる企業様は、ぜひ一度Beatrustにご相談ください。
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