Beatrust で「 Will 起点」の企業風土を醸成したい。導入事務局の 1 年。
家庭用のヘルスケア機器から、電子部品、産業向け制御機器やシステムまで、あらゆる電子機器製品を展開するオムロン株式会社。制御機器事業を担うインダストリアルオートメーションビジネスカンパニー( IAB )では、企画・開発・技術・生産部門を中心に、それぞれの部門・人が持つ知見を共有し、組織間でシームレスにつながり合うことで新たなアイデアの創発や知恵を具現化していくためのツールとして2022年2月に Beatrust を導入しました。今回のインタビューでは、トライアル導入の段階から「事務局」として現場の様子を見守ってきた3名の方に、導入時のエピソードに加え、今後目指す姿を見据えた Beatrust の活用について伺いました。
Beatrust 導入でわかったオムロン IAB の風土
ー 御社では、 Beatrust の導入を総務や人事に一任せず、所属の異なる方々が集まり「導入事務局」を立ち上げました。その点がまずユニークだと感じます。普段はそれぞれどのような部署に所属し、どのような業務に携わっていらっしゃるのでしょうか?
オムロン株式会社 植木 淳一郎様(以下、植木)
私は、アドバンストソリューション事業本部の事業推進部に所属し、サービスのグローバル展開に携わっています。エンジニアリングサービスを世界各国で同じように展開するにはどうすればいいか、その仕組みや方法を構築するのが主な仕事です。
オムロン株式会社 清水 博様(以下、清水)
商品事業本部企画室の事業計画部に所属し、人財育成や人財マネジメントシステムの構築、組織風土醸成などに携わっています。その一つとして Beatrust を活用しながら、 IAB の中長期に必要な組織の在り方を考え、組織活性化をはかっています。
オムロン株式会社 江上 慎様(以下、江上)
アドバンストソリューション事業本部のソリューションビジネス部に所属し、 FA コンサルティングのバックヤードに関わる業務を担当しています。データ分析からソリューションにつなげる仕事や、コンサルティング業務を支援するナレッジマネジメントなど、世の中のものづくりをより良くしていくための仕組みづくりに携わっています。
ー Beatrust を導入してみて、オムロン IAB の組織風土やカルチャーについて、感じたことはありますか?
清水
Beatrust を導入し、データ分析をしてわかったことですが「真面目で実直(ただ、ちょっと恥ずかしがり)」な傾向が見られました。具体的には、 Beatrust の登録の依頼には対応していただける。ただし、それ以上の自由な表現、例えば写真登録やプロフィールの登録は必要最低限なものであったり、周囲の様子を見たりするような傾向が見られました。この結果は事務局の動き次第で変わることもありますので、イコール組織風土だと言い切れない部分もありますが、「真面目で実直」というのは、長年オムロンにいて何となくわかってはいたので想定どおりだと感じました。ただ、このことは悪いことではありませんし、むしろ上手く活用すればもっと Beatrust で組織の活性化につながると思っています。
江上
真面目というのは、いい意味で捉えると、組織貢献意識が高いということだと思います。組織のためになるかどうか、常に自己採点しているようなところがあり、枠からはみ出せないというところもあるかもしれません。これまではそれで良かったのですが、企業が成長するためには、過去起点でのできること( Can )や、しなければならないこと( Must )ではなく、未来志向でのやりたいこと( Will )を起点に動けるようになっていかなければいけないと考えています。 Beatrust を活用して、その点を強化していきたいといった希望を持っています。
理想は、人と人を新しくつなぐものとして機能していくこと
ー Beatrust を導入したことで、社員が自らつながり、新しいプロジェクトが生まれたというお話も聞いています。「真面目で実直」な風土と捉えた事務局の方々にとって、このような動きが出てきたことは、御社にとって驚くべきことなのでしょうか?
清水
事務局として仕掛けてきたこともありますが(笑)、事務局の想定しないところで主体的な外へのつながりを求める Ask 投稿が出てきたり、それに反応する人物が出てきたりしたことは良い意味で想定外でした。どこの企業でも同じかもしれませんが、特にオムロン IAB は部門目標や計画の達成に懸命に取り組む文化があると感じています。これが「真面目で実直」につながっているとも言えるのですが、逆に言えば、計画にないことや他組織の支援や協力に自ら手を出す/反応するということは、苦手な傾向があると感じています。これからは様々な部署が連携しあってお互いの特徴・知見を融合しあうことが、新たな価値を生み出す要件になってくると思っています。その点において、長年の組織の色の強い文化を打破するようなつながりの事例や反応する人が表れてきたことは、目指す組織へのブレークスルーのヒントが見えてきたと感じています。今回、 Beatrust をトライアルから導入したのも計画になかったことを経営の後押しもあって、導入を決心いただきました。現在も活用できているのは、経営の組織風土変革への強い思いも感じますし、我々事務局の取り組みの後押し・原動力にもなっています。
ー なるほど。「3年後、5年後に Beatrust でこういうことを達成したい」といった KPI は設定されていますか?
清水
商品事業本部では、 Beatrust People を見ただけでその人の専門性がわかるように情報を網羅していくことを目指しています。その達成率が8割まで伸びるように働きかけているところです。「より多くの人が使うほど、より繋がりが広く強固になっていく」といった仮説に基づき、まずは裾野を広げていく。その上で、自己開示と共感の風土が醸成され、自身の専門性を磨く人が増え、 Ask で協業して問題解決に活用する……といったレイヤーが重なっていけばいいと思っています。ここ数ヵ月で、事務局で立ち上げた部門から、技術部門や生産部門などにも Beatrust を提案・導入したことで、より Beatrust による効果を活かせる状態に近づいている実感があります。
植木
アドバンストソリューション事業本部では、特に KPI を設けていません。それは、「 Beatrust は既存業務を効率化するためのツールではない」と思っているからです。何を指標にして価値評価を下すかは非常に難しいのですが、“売上や数値ではない部分” でうまく可視化していけたらいいと考えています。
江上
KPI と聞くと、設定するときはどうしても過去実績ベースの延長線上になりがちだと思うんです。過去からの延長も大事だとは思うのですが、それだけではなく「 Will 、つまり将来どうなりたいか」といった話がもっと出てくるといいと思っています。例えば、顔見知りでもないほかの部門のマネージャーにアイデアを持ち込むような人が現れてもいいと思うんです。そのためには、その人が一体どんな仕事をしている人か、この先一緒にやっていけそうか、何を目指しているのか、知る必要がある。それが Beatrust を使えば可能になると思います。そんな感じで人と人を新しくつなぐものとして機能していくのが Beatrust を活用して得られる理想の姿だと感じています。
組織を越えたコミュニケーションが始まった
ー Beatrust 導入時や、普及活動の際に苦労したことがありましたら教えてください。
植木
何しろ初めてのことでしたので、社内に向けてどのように説明するか試行錯誤しましたね。最終的には、社内 SNS に近いものだと説明し、「互いにピアタグを送り合って人とつながりましょう」とアピールしました。
ー トライアルから1年弱経ちますが、「 Beatrust を導入して良かった」と思ったエピソードはありますか?
植木
一つは「こんな情報が欲しいんですが、誰か持っていませんか?」と Ask に投げると、「私、知っていますよ」という人が現れて、その日のうちに解決できることですね。もし Beatrust がなかったら、誰がその情報を持っているかわからず、「とりあえず上長に聞いてみよう」ということになり……時間がかかったり、途中であきらめたりと、おそらく解決できません。そういう意味では Beatrust を活用して10ヵ月が経ち、組織を越えて人探しのスピード上がったことと、コミュニケーションの心理ハードルが下がってきたことは、大きな成果だと思います。最近は、皆さん使い方が堂に入ってきた感じがあり「未来に向けてこんな話しませんか?」と Ask で声をかけるような動きも少しずつ出てきています。江上さんがおっしゃった、 Will の醸成みたいなことが始まっていて、これは非常におもしろいなと思いながら見ています。
清水
例えば、生産部門のあるメンバーが発信したことを、技術部門のある方が Ask で回答するといったように、組織を飛び越えてやりとりするような動きが自然に出てきたことがうれしい事例の一つです。これが、まさに Beatrust 導入で狙っていたこと。今後はイノベーションの種のようなやり取りがもっと多くのメンバー間で生まれてくることを期待しています。更に欲を言えば、もう少し自己開示しやすい雰囲気ができてくると、もっと良いことがあるのでは思うこともあります。最近の事例ですが、あるプロジェクトを、組織を超えてやりたいという Ask が発信されました。事務局はそのテーマにどれだけ人が集まったのか知りたかったのですが、コメントがほとんどついていなかったので、投稿した人に聞いたら「実は裏では情報も人も集まっています。」という話を聞いて安心しました。 Beatrust 上では未解決に見えていただけで、枠組みの外では解決されていました。 Beatrust 上で全てわかる必要はないですが、一つの経験知としてこのような事例があることも事務局としては勉強になりました。
ー その他、Beatrustを導入したことによって得られた成果があれば教えてください。
江上
Beatrust 導入によって、 Will や企業風土を計測できるデータソースを得られたことも、一つの成果だと思っています。冒頭でも話があったように、データを分析した結果、オムロンの「真面目で実直」という風土が客観的にもわかりました。またデータの結果から、人と人とのつながりを生んでいることも客観的に示せたことで、今後も継続的に人も増やしながら活用していけば、かなり期待ができるのではと感じました。
清水
江上さんのデータ分析には感謝しています。トライアル期間中に江上さんが Ask のつながりの密度を分析してくれたことがありました。具体的には Ask の数が単純に増えても、回答している人が同じような人たちばかりなら実はつながりが薄いといえますが、分析結果はそうではなく、つながりの密度が濃くなり増えていったということをエビデンスで示せたことは、本格運営を決心する後押しになりました。
ー ありがとうございます。最後に、 Beatrust に求めることがありましたらお聞かせください。
江上
2つありまして、1つは API のオープン化です。様々なツールと連携することができれば、シームレスなやりとりが可能になり、 Beatrust を活用する人が増えそうです。もう1つは、日常シーンのどこにフィットさせるかといった動線設計。業務プロセス中に使う必然性がない点が、利用率が上がらないボトルネックのひとつだと考えています。ツールを開くための動線設計を、 Beatrust さんと一緒に考えていければいいと思っています。