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どうなる?3年後の日本企業におけるキャリアのあり方

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皆さんこんにちは!Beatrust オリジナルインタビューの第 2 弾は 株式会社SP総研 代表取締役 人事ソリューション・エヴァンジェリストの民岡 良(たみおか りょう)氏です。一般社団法人HRテクノロジーコンソーシアムの理事も務め、国内のHRテクノロジーに関するThought Leader(ソートリーダー)の一人となっている民岡様にテクノロジーやデータを駆使した人事領域の今後についてお話をお伺いしました。

民岡 良氏 プロフィール

1996年 慶應義塾大学経済学部を卒業後、日本オラクル、SAP ジャパン、日本アイ・ビー・エム、ウイングアーク1st を経て 2021年5月に (株) S P総研 代表取締役に就任。 現在は「持続可能な働き方」を追求するためのコンサルティングサービスを提供しており、「人的資本開示」( ISO 30414 )に関する取り組みについても造詣が深い。日本企業の人事部におけるデータ活用ならびにジョブ定義、スキル定義を促進させるための啓蒙活動にも従事。著書に『最新のHRテクノロジーを活用した 人的資本経営時代の持続可能な働き方』(すばる舎、2024年)等がある。

ーまずは民岡様の専門分野について教えてください。

HR領域におけるテクノロジーやデータ活用を専門として、コンサルティングサービスも提供しています。わが国においても人的資本経営という言葉が注目されるようになりましたが、欧米におけるHuman Capital Managementという言葉や概念の浸透度合いと比較すると関心や理解はまだ十分ではないと言われています。そこで、「まず初めの一歩」として、日本企業の人事領域におけるデータ活用ならびにジョブ定義、スキル・コンピテンシー定義を促進させるための啓蒙活動に従事しています。

ー日本企業の現状について教えていただけますか?

最近「スキルの可視化」についてのニーズが高まっています。この理由は大きく分けると2つあり、1つ目は人的資本経営への注目が集まっていること、2つ目はキャリア自律に向けた様々な制度を作ったとしてもうまく機能していないと悩まれる企業が多いことです。特に2つ目は相談も多く、読者世代の皆さんも感じていらっしゃる方が多いのではないでしょうか。多くの企業ではリスキリング支援や1on1の実施など、自律的なキャリア形成を支援し、相互理解を深めるための制度を作っているものの、なかなかうまく機能していない側面もあります。相手の性格や特性を理解しておくことも大切ですが、ビジネスである以上、スキルに関する情報をどうやって集めていくかが重要であり、そのことにいち早く気づいた企業から相談されることが多いです。

ー2つ目の相談に対しては具体的にどのような提案をされていらっしゃるのでしょうか?

自分のジョブ定義書を自分の手で書くことを提案しています。サポートの依頼をいただいた際には、「セルフジョブ定義」というワークショップも開催しています。自らジョブ定義書を書くことで、ご本人にとってはスキルの棚卸しになり、キャリアカルテとしても使うことができます。上司にとっては部下が仕事の範囲や責任をどのように捉えているのか把握することができ、期待している内容とすり合わせる機会にもなります。この方法であれば、スキルに関する情報が自然と集まり、部下と上司の相互理解も進むと考えています。

ージョブを定義する動きは最近日本でも耳にするようになりましたが、組織主導で行われるケースが圧倒的に多く、個人のスキルの棚卸しまで取り組んでいる方はまだまだ少なそうですね。

日本はまだまだこれからですね。ここで世界に目を向けたお話をさせてください。2023年10月にラスベガスで開催された、HRテクノロジーに関する世界最大のイベント「HRテクノロジーカンファレンス 2023」に参加してきたのですが、そこで発表されていたことを紹介します。イベントでは最先端のHRテクノロジーの発表や今後のトレンド、動きについて議論が行われていました。スキルに関連する発表も多く、「2020年代はスキルと人材不足の時代、AI活用をどう進めていくか?」が大きなテーマとして取り上げられていました。

HRテクノロジーの利活用が進んでいるアメリカであっても、従来型の人事のあり方(豊富な人材を基盤とし、ジョブが定義されてそこに人材が割り当てられていく方式)では限界があり、転換点を迎えています。

背景として

・組織内を探しても、精緻に定義されたジョブに当てはまるような人材がいるとも限らず、外部から採用しようとしても従来よりも人材獲得が難しくなっていること

・ビジネス環境の変化が激しいためジョブ(人材要件)を厳格に定義しても、すぐに定義そのものが変化してしまうこと

が挙げられていました。

ージョブ型雇用も変わっていくということでしょうか?それでは今後はどのようになるのでしょうか?

人口減少が深刻な日本社会もこの動きに追随していくでしょう。今後はタレント(人材)を中心として、その人が保有するスキルに応じて、そのスキルを活用しながらビジネスを行っていくような、新たに体系化された人事に変わっていくと考えています。

ジョブではなく、人が持っているスキルが中心になり、組織の力は個人のスキルの集合体と捉えられるようになります。また、AIがHRテクノロジー市場をこれまで以上に変革していくことも必至です。AIはジョブやスキルに関連するデータだけでなく、経済市場や業界情報のデータも取り込んでいきます。そして、採用、社内異動、組織設計、学習・人材開発、報酬管理、従業員体験、後継者計画、パフォーマンス管理、等のありとあらゆる領域で活用されていくだろう、と発表がありました。

ーこの結果、従業員にはどのような変化が生まれるのでしょうか?

まず、安心していただきたいのは、スキルのない人の行き場が突然に、完全になくなってしまう訳ではありません。会社が期待するスキルが明確になり、そのスキルを身につけることでどうなるか、明確に分かるようになるのです。また毎朝仕事を始める時に、AIが社内公募の中の最適な空きポジション、スキルギャップを埋めるために必要なラーニングコンテンツを知らせてくれる、このような未来も想像できます。

海外でのトレンドも踏まえ、今後起こりうる変化についてのお話をありがとうございました。現在についての質問です。日本企業の人事制度が変わるには時間がかかりますが、それでも個人として準備、対策できることは何でしょうか?
私の会社名(SP総研)の由来にもなっていますが、持続可能な状態(サステナブルな状態)でパフォーマンスを発揮し続けられるような環境なのか(Sustainable Performanceといえる状態にあるのか)、振り返ることが大切です。では、何をしていたらこの環境が整っていると判断できるのでしょうか?あえて申し上げるとすると「従業員がどのような強みを持っているのか可視化したり、サポートしてくれる仕組みがあるか」だと考えています。あくまで一例ですが、日本はまだまだこれからの企業が多いと感じています。

少し厳しい表現になってしまうかもしれませんが、極端に人に依存しすぎないマインドや姿勢を持つことも重要です。人との関わり、特に直属の上司や同僚との関係性は非常に大きな影響を与えます。良好な関係性が築けている方はとてもラッキーな恵まれた環境にいらっしゃると思います。周囲の環境に頼りたくなってしまうのが人間ですが、依存しすぎてしまうと自分ではなく、相手に変わってもらうことに目が向いてしまい、それこそサステナブルな働き方はできません。あくまで考える主軸を自分におき、周囲の環境はどうか?自分は何をしたいのか?と考えることがキャリア自律の第一歩です。

では、一体何をすればいいのか?すぐにできることの例としては性格特性、職業適性検査、アセスメントなどを受けてみることです。入社前後や定期的な研修の際に受けていらっしゃる方が多いのではないでしょうか。自分の強みをダイレクトにスキルで把握できるかは分かりませんが、 性格特性から把握できることはたくさんあります。「革新性がある」であれば、「課題発見能力が高い、目的思考が強い、既存にとらわれず考えて行動できる」などありますし、「コミュニケーション能力が高い」であれば、「幅広い意見を聞くことができる、マネジメント能力の素質がある」などとなります。必ず、ご自身の強みからスキルに繋がるものは見つかります。そして必ずしも定期的にチェックしなければいけないものでもありません。ライフステージの大きな変化等に伴い、自分の環境や考え方がガラッと変わったなと感じた際に、チェックしていただければ十分だと思います。

企業側が従業員に求めるスキルや、そのスキルを身につけたらどうなるかの基準づくりが、まだほとんどの企業において十分に進んでいない状況であることが心苦しいところですが、人事制度が変わることを期待したり、待つだけではなく、まず自ら率先して行動を起こすことが大切ですね。

それでは最後に、これからの社会で活躍していく読者に向けたメッセージをいただけますか?

「持続可能な働き方を求め続けよう」ということです。心身が疲弊しないように、疲弊してしまっていると感じたら部署を異動するなり転職するなり動いていいのです。人生は思った以上に長いものですし、どのようにしたら持続可能な状態でパフォーマンスを発揮し続けられるか、どんどん探ってください。所属している組織は持続可能な状態でパフォーマンスを発揮できるようサポートしてくれているか、社外にも目を向けて判断する力を養っていただきたいです。

そして繰り返しになりますが、今後の変化に対応していくためには自ら行動することです。具体的な例もお伝えさせていただきましたので、ご参考になれば光栄です。

弊社の原とも別途対談させていただきました

編集後記

Beatrust が取り組んでいる「経験やスキルの可視化」をキーワードに、今回インタビューの機会をいただきました。将来自分がどうなっているか不安に感じることは誰しもあると思います。しかし、それに対して自分で今のうちにできることを行動していれば不安も軽減しますし、その積み重ねがあれば変化に対応できるスキルも自然と身についていくのだろうと考えています。早速、自分を振り返る時間をとっていきます!それでは次回の掲載もお楽しみに! ( PR /八木)

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